こないだWebSigモデレータのmtgで和田さんとかとしていた議論を噛み締めながら、頭の中を整理するメモ
AWSでサーバ開発周りで起きていることを考える。
AWSが出たことで、サーバのハードウエア障害からおさらばになっただけでなく、構築業務はボタン一つで終わるようになった。撤去も契約も構築もいらない。さらにオートスケールや自動デプロイの手段で、その管理も自動化することができる。
まさに自動化だ。
じゃぁ、すべてのエンジニアは、どうなったのだろうか。
サーバのオペレーションという作業からは開放されたことで起きたことは、フルスタックに近いエンジニアへの要望である。
・サーバをいじるだけ
・アプリケーションを書くだけ
ではなく、AWSを活用し、サーバもセットアップできるし、アプリケーションも書けるし、間を繋ぐデプロイメントやテストも適切に構築できるエンジニアではないだろうか。何故かと言うとこの作業だけで一ヶ月の作業が埋まらないからです。むしろ、誰がさくっとやったことでサービスが成長していった結果として、その作業は「それができる人の手の中」に吸収されていきます。
必要な能力は、「Webサービスのシステム全体をうまく作り、維持する能力」ということになる。技術者全員でなくてもよいが、少なくともリーダーにはそういうのを調整する能力があると望ましい。
最近、雇用する側の要件の流動性というのを感じています。雇用される側が流動化するか否かに関わらず、雇用する際のjob descriptionは、技術の進化にあわせて流動化していくのです。これもWebSigの議論にありましたが、SIerの傘の中にある営業的な部分のSE職という仕事は、ネットサービスを運営するベンチャーやスタートアップにはありません。その役割の人がSIerでは吸収しなくてはいけなかった仕事をインターネットを使ったビジネスでは省略しているからです。本質的には誰かが代替していたとしても、そこに必要な人数が1人以下で済むのなら雇用は生まれません。これも一つの例だと言えるでしょう。
さて本題
Webデザインという仕事が、近い将来、機械学習で自動化されていくことを想像する。
最初のWebデザイナーの基礎は、例えば、美大にいた時に学ぶ、アナログな筆の使い方や、紙のデザインをしながら得られてきたUXに支えられていたと考えることができます。その中から「見た目も重要だし、ハイパーリンクを兼ね備えたツールでもある」というWebという特性を速やかに理解し応用した人がすぐれたWebデザイナーだったのでしょう。
その後、Photoshopというアプリを活用し、アナログな筆の扱い等に長けてなくても、ボタンを押すだけでデザインをする人が出てきます。はじめて使うデザインツールがPhotohopという人種です。ソフトウエアなので、いくらでもやり直しができるし、いくらでも色や線を足したり引いたりすることができまし、他の人がつけた色もRGBで簡単に模倣することができるので、色を作るスキルもいりません。
その後、このプロセスはより自動化したとして、アドビ社が新しいPhotoshopを出したとしましょう。
このPhotoshopはクラウドとセットで動きます。アクセス解析サービスであるSiteCatalystから得られる経験を機械学習し、人々の興味や、人々が望むデザインのセオリーというものを学習し、望ましい色の組み合わせや、誤認しにくいサイズ、グロースハックとして望ましい情報配置についてのリコメンドが出せるようになったとします。さらに、ボタン一つで、標準に準拠したHTMLまで出力できて、そのままボタン一つでWebサイトに公開までできてしまいます。つまりデザイナーが持つべきとされている「気持ち悪さ」を徹底的に機械学習で学んだデザイン推薦エンジンです。これを推薦機能を兼ね備えた広義のCAD( Computer aided design )としましょう。
そうなるとCAD機能を内包した新しいPhotoshopが提供するボタンを押すだけで、Webデザインができるのです。もう少し予想すると、ワイヤフレームのようなものと、いくつかの希望とするパラメータを入力すると、それに適したデザイン提案が出てくることが予測できます。もちろん、全く新しいパラダイムのデザインはできませんが、世の中で求められる商業Webデザインは、多くの人が心地よいという思うものなので、機械学習という技術が生きる絶好の場であることは想像に難くないです。
じゃぁ、Webデザイナーは不要になるのでしょうか?
ここで不要になる仕事は、
・作業としてのデザインプロセス
・HTMLコーディングという作業
つまり、お給料の厳選となる「人日」という時間が省略されます。
だから、単純に言えば「手間がかかることに連動して発生していた仕事」はなくなることが予測されます。
それに対して、このアプリに絶対に必要な物は、このアプリケーションに設定する初期パラメータや、どうして欲しいのか?という要求事項です。もし、意外とソフトウエアの使い方が難しくて、それのノウハウもあるのかもしれないですが、それはどうでもいいことです。
「そのWebサイトが何故、存在する必要があるのか?」というのは機械が決めることではありません。そこはリアルな社会と連動して存在するものだからです。コンピュータは、より最適なデザインを提案して人間が選ぶことはできますが、最後に責任をもって選ぶのは依頼主としての人間ということになります。その良し悪しを指示、判断できる必要があります。
僕はこの味付けができる人をオペレータとは呼ばないと思っています。むしろ必要とするのはデザインにおけるコアなのではないか?と思っています。AWSの話で言う、フルスタックに近いエンジニアのことを示します。ただし1プロジェクトあたりに必要な人数は、おそらく多くないです。
そのパラメータ設定に必要なスキルとして、もし基礎的なデザインスキルが必要なのであれば、引き続き、それを支えに仕事をするデザイナーは存在すると思います。いくら素敵だと思われるカラーパレットをCADシステムたるPhotoshopが提案できたとしても、最終的に要望にあわせた優れた選択をするための情報は、人間の脳内にしかない可能性が高いからです。
ただその場が産業として新人のデザインの修行の場として成り立つのか、もしくはそういう考え方が必要とされるかはわからないです。
いずれにせよ最後の最後に残る仕事がクリエイティブの幹の部分になると思います。これまで人間の作業工程の中に隠されていた、一番コアにある「実」の部分が露出することになります。厳しいことを言えば、これを作業と連動しないと作れない人は淘汰されます。この実を速やかにダイレクトに表現できる人が、こういうツールを生かしていくことになります。
そのため基礎技術は学んでなくても、うまくやれてしまう人は出てくるでしょう。これは既存のWeb制作でも起きていたハズです。省略された「技能」は機械が補っていてくれるから、「技能」はなくとも「実」の部分をうまく表現できる人というのは必ず若い世代からは出てきます。
これを技術革新に支えられたニュータイプと呼びましょう。「今の時代は若い人が絶対的に有利」である理由でもあります。
しかも、今までやってなかったところを学ぶ能力は、あたりまえですが若い人の方が自然にできるので、自然に最適なプロセスの全体を担うことになるハズです。何故なら全体のプロセスは、昔と比べて省力化されているのですから。
その時には、「人に依頼されて、デザイン作業のプロセスを提供することで、お給料をもらってきたデザイナー」は、もしかしたら暇を持て余してしまうかもしれないです。
極論ですが、1人のデザイナーが、お客さんと話をして、その後喫茶店でデザインを考えたら、プロトタイプや、アウトプットまでやっている可能性はゼロではありません。もしくは、そういう人がデザイナーチームのリーダーになっているかもしれないです。
自動化の流れで消えていく仕事というのは、オートメーションの進化の中で、省略されていく仕事であり、最後に残るのは、「何のためにその作業が必要なのか?」のコアにある部分であり、そこがあるだけでWeb制作のプロセス全体を支配できてしまう人、なのだと思います。フルスタックのように見えるデザイナーというのは、そういうところになっていきます。(フルスタックだからと言って、全部ができるべき、というのは正論すぎると思います。そんな人は絶対に存在しないのですから)
でも、このプロセスは、ある日、突然来たりはしません。
もしこのようなことになるのなら、ここで上げたような広義のCAD(= Computer aided design )である素敵なクラウドサービスが出てきてから自然に起きていくことです。最初はしょうもない完成度で、こんなの使えねーと笑いが起きると思いますが、徐々に進化を続けていくことになります。
以下のTEDの動画を見ていて、このことを思い出してました。脳内で繋がったことなので論理の飛躍があるかもしれないですが、生き残るためのヒントみたいなものだと思います。
参考URL:
「ちゃんと遅刻せずに出社しているし、指図された仕事は片づけているのに評価してくれないのですか?」 – Market Hack