MashupAwardsの最終決戦を行うFESTA 2016 By MashupAwardsというイベントで、審査員として参加させていただきました。
審査員は、僕のほかに、はてな代表の栗栖さん、レレレの山本大策さん、コイニーの久下さん、リクルートメディアテクノロジーラボの麻生さんと、企業ハッカソンにありがちな恩情判決にストップを書けられる歯に衣着せぬ、いずれも劣らぬ論客で審査をさせていただきました。(半分くらい冗談なので真に受けないようにw)
ギャル電と会えて感動!
まさか、前日にバズってたテクノロジーユニット、ギャル電の子達に会えるとは!光ってるの楽しい! コミュニティ対抗LT合戦に参加した、IoTLTというコミュニティでの参加でした。
コイニー久下さんとギャル電とおれ
はてな社長栗栖さんとギャル電とおれ
参考:電子工作をするギャルが超イケてる「週末はドンキ前でコンピューティング」
キーノート
これまで何回かMashupAwardsの審査員をやらせていただきましたが、はじめて、キーノートとしてお話をさせていただきました。
#MA_2016 FESTAキーノートはえふしんさん! pic.twitter.com/l85lH8BQse
— takesenit (@takesenit) 2016年12月17日
こちらが発表資料です。
今回、丁度、モバツイが終了したこともあり、Twitter APIの振り返りも兼ねて、Webサービスが外部提供するWEB APIによって起きていることをお話させていただいてから、MashupAwardsに思っていることをお話させていただきました。
まぁ、こういう場で、僕がキーノートで出させていただいている通り、まだまだWEB APIというのはこれからだと思っています。もっとイベントが大きくなっていれば、それこそ夏野さんがキーノートをしていたりしていたもおかしくないし、もしかしたら経済産業大臣が挨拶をしているかもしれないわけです。
しかし、ビッグデータ、IoT時代を考えれば、少なくとも企業のホームページとしてHTMLに書かれているような情報リソースは、なんらかしらの再活用ができるべきだし、実際、Googleはクロールをすることで、再利用をしているわけですが、昨今のウェルク問題も、人力クローリングによるリソースの再利用と捉えればこそ微妙に脳内をかすめつつ、まだまだAPIの世界もアーリーな世界だよなというお話をさせていただきました。
要は、企業がホームページを作らねば!というのと同じぐらい、WEB APIを作らねば商流に乗れない!となることが理想で、もうAPIが本当に当たり前になった段階で、MashupAwardsが、同じ形で続いているかはだいぶ怪しい。その代わりに、APIを使ってもらうための広告メディアがリクルートからでていたり、APIの安定性やレスポンスタイムなどを格付けをしたりサイトが出ている可能性のほうが高い。
そういうのが本丸だとすれば、今はまだ、その世界を構築している途中。そのためには、MashupAwardsで作品を出すようなクリエイターの存在が不可欠だというお話をさせていただきました。つまり、それは個々の企業が思うであろう「我々のAPIにニーズがあるの?ないの?」という鶏卵に対して、「遊びとしてAPIを使ってあげる」ことが大切だと思うからです。
毎年恒例、作品メモ
毎年恒例だったっけ? 以下に発表作品のメモを書いておきますね。
■法人参加限定のForProコース
今年から法人による参加の特殊コースが作られていました。
1.スリー・D・ペッパー
ペッパーを3台使って360度写真を生成する。
ショッピングセンターなどで使うことで、滞在時間の増加に寄与する。
というもの。残念ながら会場のwifiが繋がらずにうまくデモができませんでした。wifi問題は他のチームも悩んでいた問題で、その他、光センサーの外乱の影響など、改善したい問題がありますね。
移動しながら写真を取る姿はシュールでした。ペッパーありきで出たアイディアだったそうなので該当するわけではありませんが、ドローンで撮影してあげるほうが床の影響なども受けないかもしれなかったですね、と久下さんがおっしゃっておりましたw
2.EC用人工知能ボット知識ジェネレータ
本業は、介護用品、福祉用具のEC販売。
amazon ヤフー楽天、
会話の中で、商品キーワードがあると商品を紹介する。
まちクエスト、ヤフーショッピングなどとも連携
ユーザーローカルの人工知能ボットAPIを利用している。
当然、ECの仕事をしているので興味があるネタですが、ボットならでわのフィーチャーがもっとあったら良いかなと思いました。そもそもボットチャットで商品売れるんだろうか?と思っているので、その辺の深掘りはもっとできるかな?と。
パソコンのBTOだとか、MS-Officeのエディションの選定ようにソリューションが難解だけど、確実にニーズはあるような大企業向け商品は向いてるんですよね。要はコンサルタントの置換えですね。多分、FAQレベルでソリューションアーキテクトの人が返してるようなAWSの選定とかも自動化できそう。
介護用品とかも向いてそう。今のところはキーワードに対するマッチングに類する機能でしたが、人のお悩みにどう応えるか?特に単純なシナリオに乗らないような部分をどうカバーするのか?とかは見てみたいなと思いました。
3.全社員早押上司争奪戦
早押しで、上司を捕まえる権限
完成度高い、、、というメモが書いてありました。
世界観の作り込みが良かったですね。あとコスプレは人を作るんだな、と。なんか、みんなカッコよくて面白かったです。
ForProコースは今年はちと参加社が少なかったですが、その中でも全社員早押上司争奪戦を作った、ぐるなび新入社員チームの優勝でした。プロのデザイナーも投入しての、賞金50万円では済まない制作費がかかってそうな気はしつつも、おめでとうございます(笑)
■これまでが法人でしたが、以下、去年までと同じForAllコース
1.VISTouch AIR
前回の参式電子弓を作って優勝された安本さんと寺岡さんペア。
HMDなしでタブレット、VRを実現するというもの。
多分、HMD無しでVRを実現する技術は、おそらく他でも出てくると思います。
ただ、個人的に、VRってなんだったっけ?と思ったのは事実。まだ世界観的にオルタナティブな刈り取りは速いんじゃないかなーと思ったりもします。
というか、HMDが今でも続いてるのって理念なく、VRという言葉が暴走してる気がしていて、よくわかんないんですよねぇ。要はOculousがすごかったという話なんですけど、それにプレステが乗っちゃってさ、みたいな。
一旦、HMD-VRが落ち着いて、もっと認知拡張、身体拡張について自由なVRが出てくることを期待しています。でも皆さんのアイディアが爆発する中で、なんか、沢山の人が使い出すプラットフォームが出てくるんでしょうかねぇ。
ちなみに雑談ですが、個人的に8bit時代のゲームはVRだったんじゃないかなーと思ったり。定義広すぎっすかね。wizardly 、バンゲリングベイ、信長の野望って、頭のなかにストーリーというリアリティがあったよなーとか思ったりするわけです。そういうのはVRとは言わないのかな。
2.おばけパズル
目が光る、不思議なおばけのパズル
11ピース シンプルな曲線表裏で区別がつかない。
木と、非接触給電
非常にクオリティが高い作品でした。是非、シンプルさを保ったまま、発展いただけるとよいのかなと思います。
3.Feedom Foodmaker
スマホVR、5感トラック
電極スプーン、味と記憶のマリアージュ
ウニ、の記憶を走馬灯。いくらは、お母さんの記録が再現される。
ウニの走馬灯。。。VRコンテンツ。
KMDの研究で電極をつけたスプーンで味を再現する研究があったので、それに近いのかと思ったら、もっとコンテンツ寄りでした。世界観が面白かったです。HMDをつけて、モノを食べるというのは美味しくはなさそうですが、食べ物がマッシュアップされるというアイディアは面白そうですね。
昔、カクテルの氷の形したのがLEDで光る奴ありましたけど、あれが飲み物をより楽しくさせてくれる発展を遂げたらもっとおもろいよなぁと思って見ていました。プロジェクションマッピングの進化系で、氷がセンサになっていて、位置を検出して映像を投影するとか、そういうのがあったらどうなるんだろう。
4.なんとかめーかー りある
リアル空間とのインターフェース。マリオみたいなゲーム
審査員で評価の高かった作品です。
個人的には大変興味があります、、が、評価軸におけるデザイン性において、IPモノに世界観を頼っている部分が最優秀の審査としては、少し物足りなかったのも事実です。研究?なのかな?インターフェースの研究としては、とても良いと思います。家族で集まって遊べる、そんな製品がほしい、と思わせてくれる作品でした。
5.Hz(ヘルツ)5秒で繋がれるアプリ
超音波による通信プロトコルで、Facebookのフレンド登録を一瞬でできるようなP2Pアプリでした。
スマポのような概念で、とてもよかったです。これはこれで技術的に追いかけると良いアイディアだと思います。普通にオープンソースとかで公開して欲しい感じです。
昔、数年前に楽天さんに行った技術発表会で、外人さんの研究者が超音波で決済を実現する研究やってた記憶あるんだけど、あれどうなったんだろうかなぁ。
6.MagickKnock with MagicTV
MagickKnock
リモコン不便ですよね。
ノックだけでコントロールできないか。
ノックに反応。ノックの強弱を識別?
強さを学習、
振動をセンシング。圧電素子。。。
コンデンサマイク、物理的に取るところをこだわった。
こたつで振動を取る。
ノックの強弱で操作する。
一番役に立つ操作。軽く触る、極端に強く、。
今は1人用
回すだけで電源が入る。
SFC 増井さんのところの学生さんの研究のようでした。非常にクオリティも高いし、なんかよさそうでした。このままソニーに持っていってくだされば、普通に実用化しそう。こういうクリエイティブな先にある、ユニバーサルなデザインの製品って素晴らしいですよね。
これも審査員の評価高く。
7.Walky
東工大、メディア研究会。目の見えない人に、障害物を教えてくれる杖。
これまで超音波で周囲の状況を教えてくれる製品はあるが、超音波だと反応しっぱなし。どれが危険なのか否かがわからない。
障害物が「何」、で「どこ」にあるのか?をリアルタイムで解析
指向性スピーカーを用いて、利用者だけに障害物の情報を通知
ソラコムsimを通じて、クラウドの画像解析で、物体認識。
想いとアイディアはとてもよかったと思います。こういうのは、誰でも考えつくけど、誰もやらないので。もし、研究を続けることができるといいなと思う、とても良い作品でした。モバイルクラウド+手元のデバイスのキャッシュテクノロジなどの組み合わせなんだろうなと思いました。
8.ディスレクシアの人のための字幕読み上げ機能付きYoutubeプレーヤー
ディスレクシアとは、文字の読み書きに困難がある障害
日本では4.5%程度
見え方に困難を抱えている。文字が滲む、ぼやける、逆さ文字、斜めに。
動画の字幕を人工音声で読み上げるシステム
こちらも、とても社会意義の高い作品で素晴らしいと思いました。こちらも、技術的にはできるけど、誰かがやらなければ、誰もやらない部類のものなので、是非、想いを継続的に持って、続けていただきたいです。
9.トイレの神様
ウスサマ (トイレの神様) トイレのIoT化
固執が故に見守りづらい、プライバシーが見守れない。IoTとAIで解決。
便座デバイス。個人判別技術
音声I/F。
Internet of Toilet
問題意識
トイレで骨折するような人とかを助けたい。
「トイレに座った人は誰か」を認知する技術でした。UI系の技術学会のプレゼンテーションみたいで面白かったです。非常に社会的意義の高い研究だと思いますので、こちらも是非、もっと極めてほしいなと。こういうのをネタをちゃんと用意して、継続的にMashupAwardsに出るようなら、きっと、毎回瞬発力系の作品じゃなくても、継続開発部門とかも作ってもらえる気がしますね。
熱量が続くことが大切なので、解決したissueが難しければ難しいほどやりがいがあるでしょうね。
10.srt.js / Yotubeの映像と連動したマッシュアップ作品を簡単につくれるJavaScriptフレームワーク
mashupする仕組みを作った。動画にあわせて、花火を立ち上げる、とか。
こちら最優秀作品なので後でコメント。
11.どこでもMステ
割とネタ作品。手を振ると歓声が鳴る。人感センサーでMステの音楽が流れる。
アイディアが秀逸でした。ギターをやろうとして、挫折したコンプレックスドリブンでの開発というのも素敵です。
でも、カラオケルームがDDRのようにインタラクションを伴うコミュニケーションスペースになるのは、今後、十分想定できるので、遊び心を忘れてはいけないなと刺激を受けました。
最優秀作品の話
さて、最優秀作品だったのは、栗原さんという、今、津田塾で准教授をやられている研究者の方でした。
栗原一貴: Kazutaka Kurihara’s Website
srt.jsというJavaScriptによるフレームワークが作品で、Youtubeに字幕を入れる部分にJSを埋め込み、そのイベントによっていろんなことができるというイベントドリブンのアクションを簡単に作れる環境とURLの組み合わせだそうです。
道案内と動画解説を連携させたり、花火の動画と、実際に花火に火をつけるアクションと同期させたり、アイディア一つでさまざまなことができます。また、リアルアクションを動画にあわせさせることも自由自在にできます。
動画にイベントを埋め込んで、何かをするというのは、古くから動画技術を知ってる人なら、SMILにせよWindows mediaに組み込めるメタデータにせよ、割と当たり前だったりします。そもそもニコニコ動画のコメントそのものが、動画の時間軸にそっているわけですし、昔から、プレゼンスライドを動画と同期させるなどもありました。(というか、僕、そういうCMS作ってました。→動画に連動するビーコンをJS側で取得することで、リアルタイムに動画の視聴ログを見れたりする製品の特許 )
ただ、そのアイディアが実際に楽しめる形で沢山の人に実用化されたのは、実際のところ、ニコニコ動画だけであって、現在は、動画は動画、テキストはテキスト、画像は画像として、それぞれがスタンドアロン的に使われているのが現実。Webにおいても、マルチメディア的な何かというのは、まだメジャーにはなっていないです。せいぜいゲームですか。ちょっとIR動画+資料の同期というのはあるかもしれないですが、それは2000年ぐらいの頃から「それぐらいしか利用法がなかった」というのが現実だったりします。
その経験と比較して、栗原さんが超越していたのは、この発表に併せて、矢継ぎ早に出してくるアイディアそのもの。極論、実装そのものというよりは、栗原ワールドで繰り広げられる作品や考え方そのものがフレームワーク的であったこと。
そして、個人的には、動画技術がなし得なかった、「動画+何か」というのが、IoT時代だからこそ、次なる新たな時代を作るんじゃないか?という期待を込めて、新たに栗原さんのアイディアをマッシュアップする人達が、来年出てきてほしいなと思って、栗原さんの最優秀賞の選定に賛同した次第です。
是非、今後に期待をしたいですね。今回の結果を見て、悔しがってる人も沢山いると思いますが、また新たな一年が始まりましたので、是非、前向きに新しいアイディアにチャレンジしてほしいなと思います。
(っていうかなにげにYoutubeがすげーな、とも思ったり w)
今回、本業が研究者の参加、多いですよね。毎日やってる自分の研究の横にはみ出てくるジワジワしたものがMashupAwardsとかコミュニティ活動への発散に出てくるんだろうなと、お気持ちはわかりますw
あと、産学の繋がりって、シリコンバレー文化を考えると当たり前なので、どんどん、そうなっていくといいですよね。
さて、最後にこのリンクを引用して終わっておきます。こんな素晴らしいプレゼンと比較するのも恐縮ではありますが、僕がキーノートで発表したことにも通じるなと思って読んでました。
MIT石井裕教授が提言。「ICT敗戦国」日本を生きるクリエイターに必要な2つのこと
今年も、ほんと楽しかったです。ありがとうございました。
SFC 増井研究室の学生も出たんだし、来年ぐらいKMDの学生も出て欲しいですなー。